ワケあり!
Ver.……1


 昔。

 少女を一人、買った。

 女という生き物は嫌いだが、駒として役立つ教育をされているなら、いいだろう、と。

 顔をいじり、発信機を埋め込み――ちょっと融通の効く、アンドロイドくらいに考えていた。

 彼女は、よく働いた。

 犬のように忠義を示し、想像以上の結果を出したのだ。

 だが。

 予想外の存在が、忠犬の心を乱した。

 既に、この世にいない存在。

 その女の謎の死を手繰り寄せたバカ犬は――最悪のカードをくわえて帰ってきた。

 織田の描かれたカード。

 そして。

 彼の予定は、めちゃくちゃに引きちぎられた。

 立場的に、自分が犬一匹守れない人間だと、思い知らされた。

 そして。

 馬鹿なことをした。

 たった一度だけ。

 犬のために、あらがったのだ。

 本当に、馬鹿なことだった。

 おかげで、痛い思いどころか、生死の境をさまよう羽目になったのだから。

 同じ頃、犬も三途の川の手前をうろうろしていた。

 たいした忠犬だ。

 先に、この世に還ってきたのは彼の方で。

 犬の魂はまだ、どこかをさまよっているようだった。

 その額には、大きな傷が残っている。

 犬は、傷など気にしないように思えた。

 逃げなかった証の、向こう傷。

 そんな――忠犬が、欲しかったわけではないのだ。

 ただ、いうことをきくロボットであればよかったのに。
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