ワケあり!
 土曜の朝。

 あれ。

 絹は、違和感と共に目を覚ました。

 暖かい毛布の感触。

 見知った匂い。

 ハッ。

 がばっと、絹は飛び起きた。

 そこは――二階にある自分の部屋で、自分のベッドだ。

 いつもどおりの朝のように思えた。

 が。

 違った。

 絹は、制服のまま、眠ってしまっていたのだ。

 慌てて、昨夜の記憶をたどろうとしたが、帰りの車の途中で、ブチッと切れていた。

 ああ。

 ぐっすり寝入ってしまったのだ。

 ということは、車から降ろすのに、京か将の手を借り、このベッドまで運ぶのに、ボスか島村の手を煩わせたということになる。

 あー。

 絹は、起き出して着替えながら、自己嫌悪に足を突っ込まなければならなかった。

 帰り着くまでのエネルギーを、計算して残せなかった自分に、だ。

 ボスと島村に、顔を合わせづらい。

 しかし、怒られるなら、さっさと怒られておいたほうがいい。

 絹は、覚悟を決めて階下へ降りた。

「おはようございます」

 居間に人影を感じて、挨拶を投げると――そこにはボスがいた。

「ああ、おはよう…昨日は…ふふ、ふふふふ……私も…チョウと観測会に……ふふ…ワゴン」

 穏やかに朝の挨拶を返そうとしたようだが、ボスは昨日という単語を出した途端、いつも通りに壊れていった。

 一瞬にして、会話の記憶が甦ったのだろう。

 唇から怪しく漏れる単語が、それを物語っていた。

 チョウが参加する時には、ひとつの国を滅亡させる予定があったとしても、キャンセルして参加する気だろう。

「重かったぞ」

 ボスは問題ないようだが、島村はそうはいかない。

 居間に入ってきて、絹を見るなり一言。

 ああ、彼の手を煩わせたのか、と。

「それと…お前を受け取って抱えた時、長男と次男に派手に睨まれたから、せいぜいそれを利用するといい」

 しかし、島村は――結局、ボスのよき子分なのだ。

 思考の方向が、やはりボス寄りだった。
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