ワケあり!
「ごめんね、宮野さん…上手に支えられなくて」
車に戻った了は、とても不満そうな顔をしていた。
将のように、上手に彼女のよろけを、助けたかったのだろう。
「う、ううん…大丈夫、気にしないで」
持ってきた夜食を広げながら、宮野は恥ずかしそうに微笑んでいる。
自分も、ハタから見たらあんな風なのだろうか。
我ながら、よくやるなあ。
まとった猫の大きさに、絹はにっこり微笑んでみた。
猫の微笑みだ。
猫は、とても元気そうだった。
さて。
絹も、持ってきた夜食を取り出す。
まずは、と。
前部座席の、チョウとボスへの差し入れだ。
一緒にするより、二人分を別にしておけば、邪魔しないで済む気がしたのである。
「はい、どうぞ」
絹は、年長者二人に、夜食とお茶を振舞った。
「おぉ、おいしそうだ…私たちの分まで、ありがとう」
チョウがにこやかに、夜食を受け取る。
気を利かせて、大きな折り詰めひとつだ。
二人で箸でつつきあえ、というサインである。
だが。
「うん、うまい」
チョウは、絹の予想の上をいった。
箸には目もくれず、手づかみで巻き寿司をつかんでかぶりついたのだ。
「すまないな」
そんなチョウから、目を一瞬も離すことなく、ボスが声だけで彼女をねぎらった。
「いえ……では」
絹は、これ以上邪魔しないように、後方の席へと戻る。
若者たちには、既に宮野の夜食が振舞われていた。
出遅れたのはしょうがない。
ボスたちの給仕の方が、最優先だったのだから。
「絹さんのも、見せて見せて」
エビフライを片手に、了がせかす。
「はいはい」
絹は、持参した折り詰めを開けた。
「僕、絹さんのお寿司好きー」
こっちの末っ子も――手づかみだった。
ウェットティッシュ…ああもういいか。
絹は、苦笑しながらその光景を見守ったのだった。
車に戻った了は、とても不満そうな顔をしていた。
将のように、上手に彼女のよろけを、助けたかったのだろう。
「う、ううん…大丈夫、気にしないで」
持ってきた夜食を広げながら、宮野は恥ずかしそうに微笑んでいる。
自分も、ハタから見たらあんな風なのだろうか。
我ながら、よくやるなあ。
まとった猫の大きさに、絹はにっこり微笑んでみた。
猫の微笑みだ。
猫は、とても元気そうだった。
さて。
絹も、持ってきた夜食を取り出す。
まずは、と。
前部座席の、チョウとボスへの差し入れだ。
一緒にするより、二人分を別にしておけば、邪魔しないで済む気がしたのである。
「はい、どうぞ」
絹は、年長者二人に、夜食とお茶を振舞った。
「おぉ、おいしそうだ…私たちの分まで、ありがとう」
チョウがにこやかに、夜食を受け取る。
気を利かせて、大きな折り詰めひとつだ。
二人で箸でつつきあえ、というサインである。
だが。
「うん、うまい」
チョウは、絹の予想の上をいった。
箸には目もくれず、手づかみで巻き寿司をつかんでかぶりついたのだ。
「すまないな」
そんなチョウから、目を一瞬も離すことなく、ボスが声だけで彼女をねぎらった。
「いえ……では」
絹は、これ以上邪魔しないように、後方の席へと戻る。
若者たちには、既に宮野の夜食が振舞われていた。
出遅れたのはしょうがない。
ボスたちの給仕の方が、最優先だったのだから。
「絹さんのも、見せて見せて」
エビフライを片手に、了がせかす。
「はいはい」
絹は、持参した折り詰めを開けた。
「僕、絹さんのお寿司好きー」
こっちの末っ子も――手づかみだった。
ウェットティッシュ…ああもういいか。
絹は、苦笑しながらその光景を見守ったのだった。