ワケあり!
「お邪魔します…」

 近くの机に集まっていた彼らのところへ、絹は案内された。

「今日は、彼女も一緒にまぜてくれよ」

 さらりと言う将とは対照的に、彼らはみな一瞬動きを止めた。

 初めて、この教室であいさつした時を、思い出す。

「あ、ああ、高坂さんなら、大歓迎だよ」

 はっと我に返ったように、一人が立ち上がって、彼女の席を作ってくれる。

 ほーら。

 絹は、つまらなく目を伏せながら、将につぶやいていた。

 いくら、仲良しの男友達とは言え、その中に綺麗な顔の女を放り込んだらどうなるか、考えなかったのか。

 おかげで絹は、お姫さまのように扱われるではないか。

「高坂さんと一緒にお弁当なんて光栄だな」

「えっ、自分で作ってるんだ、家庭的なんだ」

 きわめつけは。

「将と、付き合ってるんじゃ…ないよ、ね?」

 私、しーらないっと。

「ええ」

 絹はもう、頭で考えるのもばかばかしくなって、唇の先だけで答えていた。

 少しは、いい人を卒業するべきなのだ、将は。

 宮野の件といい、今日の件といい、全然自分を有利に動かせていない。

 だから、あんなブルー顔を覚えてしまうのに。

 絹はもう、将の顔を伺ったりしなかった。

 彼がしゃべらないのが、何よりの証拠なのだから。
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