私と貴方と紫煙と単車
エンジンの振動が、シートから伝わってくる。
軽く、二回、三回とスロットロルを捻ると、自然と泣けてきた。
「よし!魅柘姫さんを迎えに行かなくちゃ!」
クラッチを握り、一速に入れると、フルスロットロルで意気揚々と校門を飛び出した。
これが初心者の運転なのだろうか?
━━バーンバンバンバーン━━
魅柘姫のやっていたダブルアクセルを真似てみるが、ミニスカートで族車は似合ってない。
「だめぇ〜先輩みたいにできないよぉ」
今日の目的地に着いた。「西条市少年院」
今日、あの人が出てくる。
あの日以来、この高い塀の中に入れられた。
ガチャ
不意に、ドアが開いた。鉄製の頑丈そうなドアだ。
「お世話になりました。」懐かしい声だ。
その一言聞いただけで、目頭に熱いものが込み上げてきた。
「先輩っ!魅柘姫さんっ!!お帰りなさいっお帰りなさいっ」
急いで、単車を降りると、大好きな魅柘姫の胸に抱きついた。
「おいおい…泣くこたぁねぇだろ〜まぁ元気でなによりだ」
下瞼に溜まった涙を、魅柘姫の服で拭うと、もう一度魅柘姫の顔を見上げた。
「それは、こっちの台詞ですっ!」
「それもそ〜だな♪」
「お帰りなさい、魅柘姫さん…」
「ただいま、櫻…」
二人は、黙って唇を重ねた。
久しぶりの再開を祝うような長い長いキス。
ようやく唇を離すと、魅柘姫は、いつもように、櫻の頭をくしゃくしゃと撫でる。
普段、何気ない行為が、とても嬉しく感じた。
「そうだ!私、免許とったんですよ。ちゃんと、バイクもメンテナンスしてましたし♪」
「櫻にしちゃ頑張ったじゃんか♪んじゃ腕前の方見せてもらうかな」
「ふふふ…驚かないで下さいよ!吃驚して、腰抜かしても知りませよ!」
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