私と貴方と紫煙と単車
大分日も傾き、夕日が、水面に反射して、橙色に染まって見える。
力いっぱいしがみついてた、櫻が、力を緩めた。「おぉ〜い櫻。着いたぞ海に♪」
「えっ!?海に?」
「いやぁ〜適当に走らせてたら海に来ちまった♪まぁ〜許せ」
そぅ言うと、櫻の頭をくしゃくしゃ撫でた。
「あ、あな……先輩のそんなとこ、嫌いじゃないです……」
今にも消えそうな、小さな声で、呟いた。
「櫻…前、来いよ。」
逢って間もないが、その中で一番優しく、力強いトーンの声だった。
櫻は、黙って頷くと、タンデムシートから前のシートに移った。
すると、バイクの横に立って赤マルを吸っていた魅柘姫が、タンデムシートに座った。
ふっと風が吹き抜けた。そして、気付けば、魅柘姫は桜を抱いていた。
「えっ!?どどどうしたんですっ?!」
「櫻…お前、よく見れば可愛いよな…。」
「ななっ何を突然……そ、そんな事…い、言われても……別に……」
「こんな時くらい素直になれよ……オレさぁ、お前に、いや…櫻に言いたいことがあるんだ……。」
「なっなんです?」
「オレ…櫻が好きだ……。好きだ。」
(二回も言わなくても……でもなんで。好きって言われて、安心してる自分がいるのはなんでなの……)
「迷惑だったか…?」
「迷惑な訳ないじゃない…ですかぁ……涙が…出てきましたぁ……」
人差し指で涙を拭い問いかける。
「さ、櫻……?」
「迷惑だったら断ってるますっ!嬉しいですっ!貴男に…先輩に、そう言われて嬉しいんですっ!」
「櫻……。」
「んふっ…」
潮騒の聞こえる夕暮れ……。
聞こえるのは、波の音、風の流れる音、唇を求めあう、二人の吐息…。
初めてのキスは、タバコの味だった。
ちょっぴり煙たくて、苦い大人っぽい味。
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