†箱庭†~ブロックルーム『1229』~
「……おい。」
沈黙を破ったのは目の前の怪しい男。
「普通、俺に会うと女は喜ぶんだぞ…。なんでお前は泣くんだ。」
少しまだ動揺しているらしいが、やっぱり上から目線。
「ぅ……うれしぃわけ……ないじゃなぃ…ちょっと格好い…ぃ……からって…何してもいいわけ…じゃ……なぃんだからぁ」
私がそう言うと、男は大きなため息をつき視線を床へ移した。
暫くまた沈黙が続いた後、何も言わず男は扉へ手を当て、私の左腕をつかむ。
扉はまた重たそうに、音を立てて開く。
その先は闇ではなく…まぶしい光があふれていた。
「こんなに早く帰れたこと俺に感謝するんだな。しかし、次はそうはいかないぞ。これはお前の言う約束ってもんにいれとけ。」
その言葉の後、私は光の海に突き飛ばされ、あまりの眩しさに目を閉じた。
とてもあたたかい。
やさしく包み込まれるような感覚に、私の意識は遠のいていく……
最後に言い放った男の言葉は気に食わなかったけど、ちらりと見せた彼の苦しそうな表情が…私の胸にチクリ…と痛みを残した。