踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
第一章
最初の犠牲者
夜のバス停を降りるサラリーマンや学生に混ざって三上響子がバスから降りてきた。
草臥れたスーツを着て心許ない足どりで歩いて行く浮かれたサラリーマンたち。塾帰りの学生たち。
それぞれが一日に課せられ義務を果たし家路に向かってあるいった。
バスからはき出されたときは数十人の塊だったものはすくに離散し其れぞれの方向に散っていった。何となく響子は人が群れる時の
吐き出す「息」というものが苦手だった。
だから真っ先にバスを降りようとはしなかった。
降車口から全部乗客がおり、人々が散り恥じまた頃、響子はバスから降りた。今日は塾をサボって気のあった仲間たちと駅前にあるカラオケボックスで歌いまくってきたのだ。
人間、ストレスを体に溜め込んでも良いことはない。適当な時期に発散するべきなんだと響子は思っていた。
でも、少しばかり咽が痛い。気のせいか声が擦れている気がする。
物事には限度があるのだろう、響子はそう思った。
大通りから二つ目の道を左に折れる。
道の両脇の家々にはまだ灯りがともっていた。響子はその灯りで手首に巻いた細い腕時計を見た。
それは午後九時を指していた。
大丈夫、親にはばれない時間だ。
それでもなるべく早く家に着こうと響子は軽く走り出した。このまま進めば正面に大きな公園が見えてくる。そこを通り抜ければ響子の家だ。
走ってきたせいか、息が上がった。
公園の入り口に設置してある車止めに座り込んで響子は息を整えていた。
ビュン
どこか遠くの方で何かが風を切る音が聞こえた。咄嗟に響子は振り返った。
だが、そこには誰も居なかった。
草臥れたスーツを着て心許ない足どりで歩いて行く浮かれたサラリーマンたち。塾帰りの学生たち。
それぞれが一日に課せられ義務を果たし家路に向かってあるいった。
バスからはき出されたときは数十人の塊だったものはすくに離散し其れぞれの方向に散っていった。何となく響子は人が群れる時の
吐き出す「息」というものが苦手だった。
だから真っ先にバスを降りようとはしなかった。
降車口から全部乗客がおり、人々が散り恥じまた頃、響子はバスから降りた。今日は塾をサボって気のあった仲間たちと駅前にあるカラオケボックスで歌いまくってきたのだ。
人間、ストレスを体に溜め込んでも良いことはない。適当な時期に発散するべきなんだと響子は思っていた。
でも、少しばかり咽が痛い。気のせいか声が擦れている気がする。
物事には限度があるのだろう、響子はそう思った。
大通りから二つ目の道を左に折れる。
道の両脇の家々にはまだ灯りがともっていた。響子はその灯りで手首に巻いた細い腕時計を見た。
それは午後九時を指していた。
大丈夫、親にはばれない時間だ。
それでもなるべく早く家に着こうと響子は軽く走り出した。このまま進めば正面に大きな公園が見えてくる。そこを通り抜ければ響子の家だ。
走ってきたせいか、息が上がった。
公園の入り口に設置してある車止めに座り込んで響子は息を整えていた。
ビュン
どこか遠くの方で何かが風を切る音が聞こえた。咄嗟に響子は振り返った。
だが、そこには誰も居なかった。
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