踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
『もの』とは美鈴の一族に伝わる言い方だといった。幽霊やもののけ、土地神の総称であり、生命エネギーの塊だという。人や生き物など形あるものが死ぬとその中にある生体エネルギーが体から離れていく。その生体エネルギーは暫くの間、生前の姿を留めているが、やがてそれは分離し、小さな欠片になる。これを『ものの欠片』という。『ものの欠片』はやがて核となるものに集まっていき、『もの』となっていく。この核が正しきものであれば守護霊、土地神、精霊などになっていくが、悪しきものであった場合、怨霊、悪霊、悪魔などに変わっていく。その色は正しきものであれば明るく青い色に見え、悪しきものは赤黒い色だという。
 一族の者が『もの』を見えるようになるのは皆女性であり、思春期、主に初潮を迎えた頃だという。そして美鈴はつい最近初潮を迎えたばかりだった。
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