踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
尾行
恵は通夜の場所から去った女のあとを追っている。その一挙手一投足を見逃さないように、それでも自分の気配を知られないように注意して…。
薄暗い町並みを行く女の後ろ姿は三上響子の家で見たそれとは異なって、力がないように感じた。何か強い感情が抜けてしまったように感じられた。確かに通夜の場でも彼女は弱々しかった。どこか気を病んでいる、そんな印象を恵には与えていた。それでも強い感情を胸の中に納めている様にも見えた。今ではその強い感情まで抜けてしまったようだ。
恵は何がそうさせたのかを考えていた。
その強い感情は被害者三上響子に対する強い憎しみではなかったか。それが彼女の死によって果たされたからではなかったか。女は三上響子が死ぬことを望んでいたのではないか。それを積極的に果たしたのではないか。
恵の頭の中にはそうした様々な考えが交錯していた。
女は恵につけられていることを気づいていないようにきれいに整えられた家々の間の路地を何度も折れていく。その後を適当な距離をとって恵が追う。
そして五回ほど路地を曲がった後、女は小さな家に入っていった。
恵は気配を消してその家の表札を確認した。
標識には『吉田』と記されていた。
薄暗い町並みを行く女の後ろ姿は三上響子の家で見たそれとは異なって、力がないように感じた。何か強い感情が抜けてしまったように感じられた。確かに通夜の場でも彼女は弱々しかった。どこか気を病んでいる、そんな印象を恵には与えていた。それでも強い感情を胸の中に納めている様にも見えた。今ではその強い感情まで抜けてしまったようだ。
恵は何がそうさせたのかを考えていた。
その強い感情は被害者三上響子に対する強い憎しみではなかったか。それが彼女の死によって果たされたからではなかったか。女は三上響子が死ぬことを望んでいたのではないか。それを積極的に果たしたのではないか。
恵の頭の中にはそうした様々な考えが交錯していた。
女は恵につけられていることを気づいていないようにきれいに整えられた家々の間の路地を何度も折れていく。その後を適当な距離をとって恵が追う。
そして五回ほど路地を曲がった後、女は小さな家に入っていった。
恵は気配を消してその家の表札を確認した。
標識には『吉田』と記されていた。