踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
 明美の速度は更に増していく。階段を下りきり、廊下を走り、靴も履き替えずに昇降口から外に出てもその速度を下げることはなかった。既に彼女の限界は超えていた。体の動きに呼吸が着いていけず次第に息をすることが出来なくなっていく。
 それは彼女の意志ではなかった。まるで誰かが強い力で彼女を引き込もうとしているようだった。
 助けを求めようとしても呼吸が出来ず声にならなかった。それでも明美は助けを求めようとした。
 速度は更に上がっていく。明美はその状態で体育館の裏手に向かう。
 そこで明美の姿は空間に呑まれていくように消えていった。
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