踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
殺害現場
翌日、公園の脇の道に数台の警察車両が停まっていた。まだ朝も早い時間だというのに数人の野次馬が集まり始めてきた。
『立ち入り禁止』と記載された黄色いテープがある一帯に張り巡らされ、その中のものを保護している。
テープの中ではある点を中心にして、それを取り巻くように人々が動いている。
中心に横たわる遺体に一人の中年の男が着古したスーツを纏い、覆い被さるようにして、その顔を見ていた。彼の儀式なのだ。彼は暫くそうしていると、今度は首の方に視線を移した。
「小島さん」
男の頭上から不意に若い女の声がした。背が高く紺色のビジネススーツをスマートに着こなし、男の背後から遺体を覗き込んでいる。
その声に反応して、男は立ち上がり、振り返った。
「おお、嬢ちゃんか」
男は答えた。
「自殺ですか?」
嬢ちゃんと呼ばれた女刑事が言った。彼女は結城恵、美しが丘署の刑事だ。
「そこの木の枝にぶら下がっていたそうだが、こいつは他殺だろう」
結城恵を『嬢ちゃん』と呼んだ男が言った。彼は小島良といった。恵と同じ美しが丘署の刑事だった。
恵は被害者の首を覗き込んだ。
「扼殺痕が二つありますね」
「そうだ、一度絞め殺して、その後に木に吊したんだろう」
「それに首に抵抗した痕がありますね」
二人は少女の遺体の首元をじっと見つめていた。
『立ち入り禁止』と記載された黄色いテープがある一帯に張り巡らされ、その中のものを保護している。
テープの中ではある点を中心にして、それを取り巻くように人々が動いている。
中心に横たわる遺体に一人の中年の男が着古したスーツを纏い、覆い被さるようにして、その顔を見ていた。彼の儀式なのだ。彼は暫くそうしていると、今度は首の方に視線を移した。
「小島さん」
男の頭上から不意に若い女の声がした。背が高く紺色のビジネススーツをスマートに着こなし、男の背後から遺体を覗き込んでいる。
その声に反応して、男は立ち上がり、振り返った。
「おお、嬢ちゃんか」
男は答えた。
「自殺ですか?」
嬢ちゃんと呼ばれた女刑事が言った。彼女は結城恵、美しが丘署の刑事だ。
「そこの木の枝にぶら下がっていたそうだが、こいつは他殺だろう」
結城恵を『嬢ちゃん』と呼んだ男が言った。彼は小島良といった。恵と同じ美しが丘署の刑事だった。
恵は被害者の首を覗き込んだ。
「扼殺痕が二つありますね」
「そうだ、一度絞め殺して、その後に木に吊したんだろう」
「それに首に抵抗した痕がありますね」
二人は少女の遺体の首元をじっと見つめていた。