踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
「詳しく調べてみなければ分かりませんが、前の二件のものと同一だと思われます」
明美の首にかけられた紐状のものをじっと見つめて鑑識の岸田が言った。
美しが丘中学校の校庭、数人の刑事と鑑識課員が動いている。周囲には立ち入る禁止のテープが張り巡らされている。
「やはり俺が出くわしたのが一連の事件の犯人か」
岸田の背後で小島が呟いた。
「恐らくそうだと思われます」
岸田が小島の言葉を受ける。
小島は自分に対して歯痒かった。犯人に接触しながら取り逃がしてしまったのだから。しかも相手は体中に黒いスエットを着込み、目出し帽を被っていたため、その顔すら見ていない。
だが、今回は犯行の途中で自分達が割り込んできたため、足形や彼に投げつけたナイフなどの遺留品が幾つか残されている。犯人に一歩近づいてきたことを小島は感じた。
「それにしても、おかしい…」
小島は事件現場をもう一度見回した。
今回、犯人はナイフを使ってきた。恐らく常に持ち歩いているのであろう。だとしたら理解できないことがある。
何故、首吊りなのだろう?
単に殺すことが目的ならばナイフの方が時間が掛からない。わざわざ首を絞め、その後に首を吊るなどという面倒なことをする意味が分からない。しかもこれまでの事件現場には証拠を殆ど残していない。一連の事件は計画的に行われている可能性が強い。
ならば、首を吊るということは犯人にとっては重要な意味があるはずである。
それは何か…。
小島は明美が倒れていた場所を見つめて、考えを巡らせた。
そして一つの結論に達した。
犯人にとって首を吊らせるという行為は一つのメッセージなのだ。あの携帯電話に残されていたメッセージや自殺した沙保里という子の日記は繋がっているのだ。
小島はこのパズルの最後のピースをはめるため、岸田に一つの質問をした。
「この子の携帯電話はどこにある?」
そう、事件現場には明美の携帯電話は無かった。
「ああ、それならその子の鞄の中にありましたよ」
同僚の刑事が明美の携帯電話を小島に手渡した。それを受け取ると彼は携帯電話を開いて受信したメールを確認した。
そして、探していたメッセージを見つけた。
『私は殺された。
だから、おまえを殺す。』
明美の首にかけられた紐状のものをじっと見つめて鑑識の岸田が言った。
美しが丘中学校の校庭、数人の刑事と鑑識課員が動いている。周囲には立ち入る禁止のテープが張り巡らされている。
「やはり俺が出くわしたのが一連の事件の犯人か」
岸田の背後で小島が呟いた。
「恐らくそうだと思われます」
岸田が小島の言葉を受ける。
小島は自分に対して歯痒かった。犯人に接触しながら取り逃がしてしまったのだから。しかも相手は体中に黒いスエットを着込み、目出し帽を被っていたため、その顔すら見ていない。
だが、今回は犯行の途中で自分達が割り込んできたため、足形や彼に投げつけたナイフなどの遺留品が幾つか残されている。犯人に一歩近づいてきたことを小島は感じた。
「それにしても、おかしい…」
小島は事件現場をもう一度見回した。
今回、犯人はナイフを使ってきた。恐らく常に持ち歩いているのであろう。だとしたら理解できないことがある。
何故、首吊りなのだろう?
単に殺すことが目的ならばナイフの方が時間が掛からない。わざわざ首を絞め、その後に首を吊るなどという面倒なことをする意味が分からない。しかもこれまでの事件現場には証拠を殆ど残していない。一連の事件は計画的に行われている可能性が強い。
ならば、首を吊るということは犯人にとっては重要な意味があるはずである。
それは何か…。
小島は明美が倒れていた場所を見つめて、考えを巡らせた。
そして一つの結論に達した。
犯人にとって首を吊らせるという行為は一つのメッセージなのだ。あの携帯電話に残されていたメッセージや自殺した沙保里という子の日記は繋がっているのだ。
小島はこのパズルの最後のピースをはめるため、岸田に一つの質問をした。
「この子の携帯電話はどこにある?」
そう、事件現場には明美の携帯電話は無かった。
「ああ、それならその子の鞄の中にありましたよ」
同僚の刑事が明美の携帯電話を小島に手渡した。それを受け取ると彼は携帯電話を開いて受信したメールを確認した。
そして、探していたメッセージを見つけた。
『私は殺された。
だから、おまえを殺す。』