踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
太田はワイシャツのポケットに差していた棒付きキャンディの一つを取出し暫く口の中で弄んでいた。
小島はその様子をじっと見つめていたが、」やがて意を決したように口を開いた。
「係長、私はこれを犯人からのメッセージと考えています
「メッセージ?」
「はい、犯人は楽に殺せるナイフを使わずにわざわざ面倒な『首つり』を選んでいます。きっと『首つり』に関する何かをわたしたちに伝えようとしているのかもしれません」
小島はそこまで言うと手にしていたファイルを太田の前に広げた。
「実はあの学校では以前に首を吊って亡くなっている子がいます。私たちが自殺として処理した案件で吉田沙保里という子が亡くなっています」
「この案件が何か関係しているというのか?」「ええ、当初この現場には遺書らしきものはありませんでした。そこで自殺か事故ということで調べを始めましたが、ほどなく彼女の日記が出てきたので、その内容から自殺と判断した訳です」
「そこに何か問題でもあるのか?」
太田の口の中でキャンディがころりと転がった。
「はい、私もその日記を読みましたが、その中にこの事件の被害者三人の名前が記されていました」
小島は大田の方に乗り出した。
「係長、この一連の事件は吉田沙保里の死に対する復讐です。私はこの事件に対して動機のある人間を知っています」
小島の口調が強くなっていく。
「それは誰なんだ?」
「吉田沙保里の両親、吉田真人と吉田恵子です。係長、任意で引っ張らせてください」
小島の言葉に太田の動きが一瞬止まる。彼の視線が小島の瞳を真っ直ぐに貫いていく。「確証はあるのか?」
太田の声が囁くように小島の耳に届く。
「動機があります。それに最初の事件当日のアリバイがありません」
太田の口の中のキャンディが動きを止めた。腕を組み、考え込んでいる。その太田を小島の視線が貫いていく。二人の視線が交錯する。「駄目だ、それだけでは任意で引っ張るわけにはいかん」
太田の言葉は半ば小島は予想していた。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「係長、この事件はこれで終わりじゃありません。日記にはあと一人、名前が残っています!」
「引っ張れんことは引っ張れん!」
「しかし!」
「引っ張りたければもっとちゃんとしたものを持ってこい。それが出来なければその残った名前の子を徹底的にガードしろ!」
太田はそう言うと去って行ってしまった。
小島はその様子をじっと見つめていたが、」やがて意を決したように口を開いた。
「係長、私はこれを犯人からのメッセージと考えています
「メッセージ?」
「はい、犯人は楽に殺せるナイフを使わずにわざわざ面倒な『首つり』を選んでいます。きっと『首つり』に関する何かをわたしたちに伝えようとしているのかもしれません」
小島はそこまで言うと手にしていたファイルを太田の前に広げた。
「実はあの学校では以前に首を吊って亡くなっている子がいます。私たちが自殺として処理した案件で吉田沙保里という子が亡くなっています」
「この案件が何か関係しているというのか?」「ええ、当初この現場には遺書らしきものはありませんでした。そこで自殺か事故ということで調べを始めましたが、ほどなく彼女の日記が出てきたので、その内容から自殺と判断した訳です」
「そこに何か問題でもあるのか?」
太田の口の中でキャンディがころりと転がった。
「はい、私もその日記を読みましたが、その中にこの事件の被害者三人の名前が記されていました」
小島は大田の方に乗り出した。
「係長、この一連の事件は吉田沙保里の死に対する復讐です。私はこの事件に対して動機のある人間を知っています」
小島の口調が強くなっていく。
「それは誰なんだ?」
「吉田沙保里の両親、吉田真人と吉田恵子です。係長、任意で引っ張らせてください」
小島の言葉に太田の動きが一瞬止まる。彼の視線が小島の瞳を真っ直ぐに貫いていく。「確証はあるのか?」
太田の声が囁くように小島の耳に届く。
「動機があります。それに最初の事件当日のアリバイがありません」
太田の口の中のキャンディが動きを止めた。腕を組み、考え込んでいる。その太田を小島の視線が貫いていく。二人の視線が交錯する。「駄目だ、それだけでは任意で引っ張るわけにはいかん」
太田の言葉は半ば小島は予想していた。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「係長、この事件はこれで終わりじゃありません。日記にはあと一人、名前が残っています!」
「引っ張れんことは引っ張れん!」
「しかし!」
「引っ張りたければもっとちゃんとしたものを持ってこい。それが出来なければその残った名前の子を徹底的にガードしろ!」
太田はそう言うと去って行ってしまった。