踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
美鈴と佐枝は追ってくる加瀬の視線に気づかないまま、いつものように家路についていた。
校門を出た時には一塊になっていた生徒達も今では彼女達二人になっていた。
スーパーマーケット、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、二人は通り過ぎていく。その二人を静かに加瀬が追いかける。美鈴が一人になることを待ちながら…。
「ねえ、私達つけられてない?」
後ろを気にしながら佐枝は美鈴に囁きかけた。美鈴もその気配を感じていた。粘っこい視線が体に纏わり付くような感じがしている。「うん、私も気がついていた」
二人は肩越しに後ろを見た。
誰もいなかった。いや、いないように見えた。それだけあいては巧みに隠れているのだろう。
「もしかして…」
佐枝には心当たりがあるようだ。
「つけているのって、加瀬じゃない?」
「加瀬って、あの?」
加瀬の名前は美鈴も知っていた。この辺りでは有名な不審者だ。
二人は背筋が寒くなっていくのを感じた。「ねえ、走ろう」
佐枝の言葉を切っ掛けにして、二人は走り出した。
二人の少女が走り出すのを見て加瀬もまた走り出す。ここで取り逃がしたら昨夜の声の提案が果たせなくなる。二人をつけてみて判ったのだが車を停めた場所はここからさほど離れていない。しかも人通りが殆どないので捕まえてしまえば問題なく逃げることが出来る。
せっかくのチャンスを逃したくない。加瀬はいつになく興奮していた。
だが、体力の差がそれを難しいものにしていた。元気な中学生と普段運動をしていない加瀬とは比べものにならなかった。二人の少女と加瀬の間の距離は次第に離れていく。それでもこのチャンスを逃がしたくない加瀬は、息を切らせながらも必死に追いすがる。
校門を出た時には一塊になっていた生徒達も今では彼女達二人になっていた。
スーパーマーケット、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、二人は通り過ぎていく。その二人を静かに加瀬が追いかける。美鈴が一人になることを待ちながら…。
「ねえ、私達つけられてない?」
後ろを気にしながら佐枝は美鈴に囁きかけた。美鈴もその気配を感じていた。粘っこい視線が体に纏わり付くような感じがしている。「うん、私も気がついていた」
二人は肩越しに後ろを見た。
誰もいなかった。いや、いないように見えた。それだけあいては巧みに隠れているのだろう。
「もしかして…」
佐枝には心当たりがあるようだ。
「つけているのって、加瀬じゃない?」
「加瀬って、あの?」
加瀬の名前は美鈴も知っていた。この辺りでは有名な不審者だ。
二人は背筋が寒くなっていくのを感じた。「ねえ、走ろう」
佐枝の言葉を切っ掛けにして、二人は走り出した。
二人の少女が走り出すのを見て加瀬もまた走り出す。ここで取り逃がしたら昨夜の声の提案が果たせなくなる。二人をつけてみて判ったのだが車を停めた場所はここからさほど離れていない。しかも人通りが殆どないので捕まえてしまえば問題なく逃げることが出来る。
せっかくのチャンスを逃したくない。加瀬はいつになく興奮していた。
だが、体力の差がそれを難しいものにしていた。元気な中学生と普段運動をしていない加瀬とは比べものにならなかった。二人の少女と加瀬の間の距離は次第に離れていく。それでもこのチャンスを逃がしたくない加瀬は、息を切らせながらも必死に追いすがる。