踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~

対決

 突然上方で大きな音が響き、ガラスの破片と黒い塊が降ってきた。ガラスの破片は,道に散らばり、黒い塊は一度バウンドして叩きつけられた。
「小島さん」
「ああ、行こう」
 小島と恵は物陰から飛び出し、黒い塊の方に駆け寄った。黒い塊は下着姿の飯田美佳だった。
 恵は駆け寄ると美佳の首に触れ脈の有無を確認する。
「大丈夫、生きています」
 小島は注意深く辺りの気配を伺う。
 夜も遅いせいかこの異変に気づいた人はいないようだった。小島はゆっくり恵に近づく。緊張は解かないまま、美佳の様子を探る。
「どうだい、様子は…」
「体中にガラスで切った細かな傷はありますが意識はあります。ただ、何かに酷く脅えています。今、救急車を呼びます。」
 恵は携帯電話を取り出すと急いでダイヤルする。
 辺りは物音一つしない。
 周囲の気配を探っていた小島は、道の向こうに見覚えのある少女の影を見つけた。
「嬢ちゃん、あれ、この間の子じゃないか?」 小島の指さす方向を見た恵は黙って頷いた。
「こんな時間に何をしているのだろう」
 小島は場違いな少女の姿に疑問を抱く。
 その時、物陰から黒い人影が姿を現す。
 暗闇にナイフが光った。
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