付き合って1年目、彼氏は浮気男


「…俺は赤面性なんだ」

「……は?」


いきなり何を言い出すんだい?


深刻なこの空気で、ふざけるとはいい度胸だな?


「…わーっごめん!ふざけてない、ふざけてない!いたって本気!!」


笑顔で拳を温めるあたしに顔を青くして否定する陽雄。


取り合えず拳を元の位置に戻す。


「…で?」

「えっ…あー…うん。俺の場合、人に触れたり近付いたりすると、顔が赤くなる」

「うん…」

「…それも、誰にでもなる訳じゃなくて……その、好きな子にだけなるんだ」

「…え?」


それって……?


ジッと見つめるあたし。


陽雄はバツが悪そうに顔を背け、小さな小さな声で言った。


「……だから、恵には触れられなかった」


“恵”


忘れられたと思っていたその名前は、一番呼ばれたい人によって、心地いい響きとなって耳に届いた。


瞳に涙が溜まり、零れそうなのを必死に堪える。


顔を伏せて、陽雄にバレないようにする。




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