俺様の運命の女神


ドクドクドクドクッ…。

……鳴り止みそうにない。


硬直する俺の服を掴んで、


「先輩?具合が悪いならまた、今度にしましょう?」


彼女は気遣って笑顔を見せた。


「いやっ…別に何ともない…」

「そうですか?」

「あぁ……」


俺は掴まれた腕を掴んで手に握り直し、

彼女に表情を悟られないように

少し斜め上を見ながら歩き出した。


生まれて初めての『デート』

緊張するのも無理はない。

俺は心の中で…

『落ち着け…落ち着け…』と唱えながら

彬に教わったように、

彼女の歩くペースに合わせて

ゆっくり…ゆっくり…

肩を並べて歩いた。


< 235 / 297 >

この作品をシェア

pagetop