アクセサリー
 合コンが終わると「二次会に行こう」と誰かが言いだす。でも隆一は、
「いや、ここで帰るよ」
と答える。すると、
「じゃあ、私も」
 隆一のあとに、タカミもそう言った。別に一緒に帰ろうと口裏合わせをしたわけではない。タカミは隆一に合わせたのだ。隆一がタカミに感じた同じものをまた、タカミ自身も 隆一から感じたのだろうか。
 タカミと隆一は中央線に向かった。
 終電を待つ駅のホーム。真っ暗な線路の向こうに電車の光が見える。
「また会いたいね」
 タカミは言った。
「またじゃなくて今がいい」
 隆一はそう答えた。
 タカミは阿佐ヶ谷でなく立川で降り、隆一のアパートでセックスをした。

「私のこと、軽薄な女だと思っているでしょ?」
ベッドの中でタカミは言った。
「そう?」
 隆一は暗闇の天井を見つめながら言った。
「私ね、会ってその日に寝るなんてこれが初めてなの」
 ゆっくりとタカミは隆一に背を向け、ぽつぽつと語り始めた。
「私、このままじゃいけないな……、と思うの。あと何年か分らないけど働いて、好きな 人ができて、結婚して、寿退社して、主婦になって、育児に追われて、年をとって、シワも増えて、お腹も出ちゃって……。そんな人生おもしろいのかな? 人生って何をしたら楽しいのかな? って思っているの」
 隆一は黙ってタカミの話を聞いていた。
「だからね、今日みたいにわざと高いお洋服着て、高い香水つけて、髪もきれいに巻いて……、これ〝艶やかスイング巻き〟って言うのよ。なんかおかしいでしょ?……」
 ふふっ、とタカミは少し笑った。
「それから、会ったその日に寝てみたりしたの。やったことないからやってみたかったの。軽い女だって思わないでね。これが初めてなんだから」
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