アクセサリー
 タカミはこれからの不安をよく語った。先のことを考えれば暗くなってしまうと。
 その話題になれば、気の利いた何かを言うべきなのだろう。そんなことぐらいは隆一にも分かっている。しかし何も言わなかったし、言えなかった。
「分かるよ」
 ただ相槌を打つばかり。
 同じような気持ちを共有する仲として隆一とタカミは一緒にいたような気がする。


       *


「……タカミは最近会ってないな」
「ふーん……」
 玄太郎は聞いてはいけないことを聞いたな、と決まりの悪そうな顔をした。
 タカミとはもう三か月会っていない。連絡がとれなくなったこともあるが、隆一自身がいつまでもタカミと会っていても仕方がないように思えた。
 このまま自然消滅、そう考えていた。
「オイラがたたけばー、あっらしをよぶぜー」
 玄太郎は鼻歌の続きでドラムの練習をしている。
 さあて……、どうしたものか? タカミのことを思い出して切ない気持ちがぶり返した。
 隆一が今やるべきこと。それは学園祭に向けてのギターの練習。それだけに集中すればいい。
 なんとなく携帯を取り出して、今朝届いていたメールを見直した。

 件名「おはようございます☆」 10 / 25 10 : 20

 返信遅れてしまってごめんなさい。
 その演奏会の日は大丈夫です。ぜひ隆一君のギター弾いている姿を見たいです☆
 楽しみにして待っています
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