アクセサリー
十月二十四日、水曜。時刻は午後五時十分。
日中は学生で賑わうラウンジだが、隆一と彩乃以外、誰もいない。
隆一は放課後のバンド練習までの時間をいつもここでつぶしていた。
彩乃とは前の時間に同じ授業をとっている。毎回授業に出席し、隆一の近く座っている彩乃が前から気になっていた。気になっていたといっても好きとか、恋心を抱いているというわけではない。ただなんとなく、あんまり遊ぶ感じのしない、慣れない環境の抵抗感のなかでぎこちなく生きている、初々しい感じの女の子と話してみたかった。
「今、時間ある?」
ぶっきらぼうに隆一は尋ねてみた。
「えっ? ありますけど」
彩乃は誘われるなんて考えてもいなかったのだろう。私が、なんで? というような不思議な顔をしたが、時間つぶしに付き合ってくれたのだった。
ふっとカバンの中から見える彩乃の携帯に目がいく。
「それってソフバ?」
「ソフバ?」
「携帯だよ。その機種、ソフトバンクでしょ?」
「あっ……、ソフバっていうんですか?」
「知らないの? 遅れてるよ。それから敬語の必要なんてないから」
「あっ、はい……」
「また敬語になったじゃん」
「あっ、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいよ。どっかの大臣じゃないんだからさ……、それにしてもソフバっていうこと知らないの?」
「スタバなら知ってるんだけど……」
彩乃の顔が赤くなった。
「なんでスターバックスでてくるんだよ。彩乃、遅れてるよ。……まあ、いいや。俺もソフバなんだよね……、じゃあメアド交換しよう。ソフバなら番号だけでいけるじゃん」
「あっ……、うん。ちょっと待ってね、登録画面開くから……」
「そんな面倒なことしなくていいって! ちょっと貸してみ」
「え、何?」
彩乃がいじっている携帯をそっと取り上げて、さっさと自分の番号を押す。
隆一の携帯のバイブレーションが鳴る。
「これでオッケー。今押した番号登録しておいてよ」
隆一は彩乃に携帯を返す。
日中は学生で賑わうラウンジだが、隆一と彩乃以外、誰もいない。
隆一は放課後のバンド練習までの時間をいつもここでつぶしていた。
彩乃とは前の時間に同じ授業をとっている。毎回授業に出席し、隆一の近く座っている彩乃が前から気になっていた。気になっていたといっても好きとか、恋心を抱いているというわけではない。ただなんとなく、あんまり遊ぶ感じのしない、慣れない環境の抵抗感のなかでぎこちなく生きている、初々しい感じの女の子と話してみたかった。
「今、時間ある?」
ぶっきらぼうに隆一は尋ねてみた。
「えっ? ありますけど」
彩乃は誘われるなんて考えてもいなかったのだろう。私が、なんで? というような不思議な顔をしたが、時間つぶしに付き合ってくれたのだった。
ふっとカバンの中から見える彩乃の携帯に目がいく。
「それってソフバ?」
「ソフバ?」
「携帯だよ。その機種、ソフトバンクでしょ?」
「あっ……、ソフバっていうんですか?」
「知らないの? 遅れてるよ。それから敬語の必要なんてないから」
「あっ、はい……」
「また敬語になったじゃん」
「あっ、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいよ。どっかの大臣じゃないんだからさ……、それにしてもソフバっていうこと知らないの?」
「スタバなら知ってるんだけど……」
彩乃の顔が赤くなった。
「なんでスターバックスでてくるんだよ。彩乃、遅れてるよ。……まあ、いいや。俺もソフバなんだよね……、じゃあメアド交換しよう。ソフバなら番号だけでいけるじゃん」
「あっ……、うん。ちょっと待ってね、登録画面開くから……」
「そんな面倒なことしなくていいって! ちょっと貸してみ」
「え、何?」
彩乃がいじっている携帯をそっと取り上げて、さっさと自分の番号を押す。
隆一の携帯のバイブレーションが鳴る。
「これでオッケー。今押した番号登録しておいてよ」
隆一は彩乃に携帯を返す。