アクセサリー
「瀬戸さんはいくつだっけ?」
 遠藤先生が言った。
「私、十八です」
「十八! 若いねぇ……。でもお酒は飲んじゃだめだよ」
 かまどか吉祥寺店でのコンパ。鍋をつつきながら、他愛もない話をしている。
「瀬戸さん、一番若いんじゃない?」
 コンパに参加しているのは遠藤先生も含めて五人。遠藤先生は四十歳後半ぐらいの男性教員。とてもおだやかな先生で彩乃は好きだった。
「そうですね……、私が一番若いんですね」
 直美は彩乃と同じ一年だが、一年浪人しているためにもう二十歳だ。ほかは大学三年の男子学生が二人いる。
「えっ、まだ十八ってことは……、誕生日いつ?」
「十二月二十四日です」
「クリスマス・イブじゃない。それはすてきな日だね」 
 彩乃の誕生日はクリスマス・イブ。子供のころ、彩乃は誕生日とクリスマスをかねてお祝いをされていたので、なんだか損をしているような気がしていた。下手をすれば、お正月もかねられてしまう。しかし、今になって考えればかなりすてきな誕生日だ。
「今年は誰にお祝いしてもらうつもりなの?」
 遠藤先生は男女関係のことにつっこんでくる。彩乃はドキっとしたが、
「それは……、内緒です」
と平静を装いながら返答した。
「セクハラになりますよ! 先生」
 大野という学生が遠藤先生を牽制した。
「それは困るなあ」
 遠藤先生はそこで諦めたようで、
「大野くんたちはもうすぐ就職でしょ?」
と、話題を切り換えた。彩乃は質問攻めから解放され、ほっとした。しかし、そんな様子を直美は見逃さない。何か感づいたような顔でこちらを見ている。
「実家を継ぐんだっけ?」
「はい。酒屋なんですけど……」
 遠藤先生の矛先が三年の先輩学生に向かっている。そのすきに直美は、
「ねえ、何かあったんでしょ?」
と言いながら顔を近づける。これは感づかれてしまったかもしれない。潔くイエスと答えてもいいのだが、ここではあまり言いたくない。
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