アクセサリー
「彩乃」
後ろから隆一の声がする。驚いて振り向く。
「驚かせちゃった?」
隆一はギターケースを肩にかけて、細身のジーンズに黒のライダース・ジャケットを着ていた。
「ごめん」
「あやまんなくてもいいよ」
隆一は目にかかった髪を中指で横に流す。
「あのさ、俺さっきから何も食べてないんだ。ドナ行ってもいいかな?」
「ドナ? ああ、パスタ。好きなの?」
「そう好きなんだよ。……ああ、でも彩乃はもう食べてるんだよね?」
「ううん。大丈夫だよ」
彩乃は首をふった。
少し前に食事を終えたところだが、隆一と一緒ならどこへ行ったってかまわない。どこで何をするかじゃなく、隆一と何をするかが大事なのだ。
「悪いね。……じゃあ行こうか?」
そう行って隆一は歩き出す。
「うん」
彩乃は隆一と並んで歩く。隆一はすらっと背が高い。隣に並んで歩いていると、いつもより大きく見えてドキドキした。
「隆一君って背、高いね。身長は何センチあるの?」
「何センチだと思う?」
「百八十センチくらい?」
「そんなにないよ! そんなのはいいって」
隆一は笑いながら否定した。彩乃は正直に答えたつもりだったが、お世辞に解釈されたようだ。
「でも、そのぐらいに見えるよ」
「あっ、そう? 靴底が二センチぐらいあるからかな? 俺は百七十六だよ」
「そうなんだ?」
「本当は百七十五・六だけど四捨五入してるんだ。別にいいだろ?」