アクセサリー
「メールとか電話はしょっちゅうやっちゃいけないの。あえて一週間ぐらいしないのも作戦よ」
直美から聞いた恋愛テクニックを彩乃は実践した。メールや電話を一週間もしないと忘れさられてしまう不安があった。一か八かの作戦のようにも思えたが、
「どうせ一週間後にライブ行って会うんでしょ? だからその間は勉強よ」 
と直美に言われた。
 直美から教えてもらったことは三つ。軽いスキンシップを心がけて甘えること。マメであること。刺激的な服装をすること。
「男って単純だから、肩さわられたり、手を握られたりして甘えれたら勘違いしちゃうよ。それからジーンズとかじゃなくて、もっとフェミニンな服着ないと! 彩乃きれいなんだから」
 そう思うけれど、隆一には通用しないような気がした。だからといって何もしないと何も生まれない。だからやれることはやってみよう、彩乃はそう思った。

 十一月一日、午前九時。
 この日のために買ったジルスチュワートのグレンチェックスカート。腰のあたりにリボンがついていてとてもかわいい。白のツインニットを着て、黒いストッキング、黒のパンプスで合わせた。
 鏡の前に立つ。服に自分が浮いてしまっているような気がして少し恥ずかしくなった。外に出ると恥ずかしさが増す。
「何でも慣れだから」
 直美の言葉を思い出して勇気を出す。
 今日は秋晴れ。とても気持ちがよくて、でも冷たい風が吹く。スカートからのぞく足が寒い。
 でもがまん。何でも慣れだから。
 十時半に大学の南門で直美と待ち合わせをしていた。少し早めに着いた彩乃は、にぎやかなキャンパスを眺めていた。チョコバナナや、ポップコーンの屋台が見える。「……おはよう」
 急に後ろから声がする。びっくりして振り返ると大柄な男がいた。どこかで見たことがある。
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