アクセサリー
「いいぜ」
 トモヒロさんが言った。
 玄太郎もうなずく。
「……うん、OK」
隆一も気をとりなおして、うなずいた。
「みなさん、こんにちは。すごいたくさん集まっていただいて光栄です。それじゃあ……とりあえずこの曲から行きましょうか?」 
 徳さんの合図に玄太郎がカウントを叩き、隆一は『Driver’s High』のイントロを弾いた。




 思った以上の爆音だ。
 すごい勢いで空気が襲ってきて、胸が圧迫されるような感じで少し痛いような気もする。特にドラム音がすごい。
「あの人カッコよくない?」 
直美は彩乃に耳を近づけて言った。そうしないと声が届かない。
「誰のこと?」
「ベース弾いてる人。もしかしてあれが隆一?」
「ううん、ベースじゃなくてギター弾いてる人」
 彩乃も直美の耳元で言った。
「ふうん」
 直美はうんうんと大きく首をふる。しかし、隆一よりもベースの人に興味があるようだ。
「ベースの人カッコいいね。でも隆一もまあまあ良いんじゃない? 二十二だっけ? やっぱりちょっと大人っぽいね」
 ベースの人と比べられて少しムっとした。ベースはトモヒロさんだったっけ? たしかにワイルドなイケメンだ。女性ファンがいるのも分かる。
 隆一は柄のシャツの上に黒のジャケットを着ている。ギターは黒くて細く角ばっている。彩乃はギターと言えばアコースティックギターのようなひょうたん型のものしか知らなかった。隆一の弾いているギターはアメリカとかヨーロッパのバンドが好んで使っているような気がした。まだ想像以上の爆音になれない。
「ステージングはないのね」
「ステージングって?」
「ステージ上での動き! プロのバンドだったらギターふりまわしたり、ジャンプしたりするでしょ?」
「ああ」
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