アクセサリー
13
 大学の帰り道にある居酒屋で、簡単な打ち上げをしていた。ユウキさんは口より少し大きな唐揚げを無理に押し込んだ。
「でもさ、けっこう良かったんじゃないの?」
 唐揚げを飲み込んだトモヒロさんが言った。
ゴリメタルは呼ばず、隆一たちのバンドだけだ。店内はそれほど混んではいない。まだ学園祭初日だから、打ち上げをする人はいないようだ。隆一たつはゆうゆうと食事を楽しんだ。
「超気持ち良かった!」
 ビールを一気に玄太郎は飲みほす。
「車運転しないと思っていい気なもんだよな」
 ドライバーのトモヒロさんは苦笑した。今日は機材を運ぶのにトモヒロさんの車を使ったのだ。
「あっ、ごめんなさい」
 遠慮がちに玄太郎は空になったグラスを置いた。その横で徳さんも勢いよくビールを飲んでいる。ペースはかなり早い。
「今日はすごい飲むね」
 隆一は徳さんに話しかけた。トモヒロさんも、
「いつもの倍のペースだな」
と言う。
「ああ……うん」
 カチッ、カチ。
 百円ライターでタバコに火をつけ始めた。今日の徳さんはタバコも吸っている。隆一は徳さんがタバコを吸うところを初めて見た。
「タバコ吸うんだ?」
「今年初だけどね」
ライブにそなえて禁煙していたが、本来はタバコを吸う人らしい。
 徳さんはやるせないような煙をはきだす。テーブルに吸いがらと空になったグラスが増えていく。
その頃には隆一だけでなく、トモヒロさんも、玄太郎も、徳さんの様子がおかしいことに気づいていた。「誰か聞いてみろよ」と隆一たちは互いに目で合図をしていた。
 目配せしている間にも酒量は増えて、徳さんは顔がどんどん赤くなっていった。トモヒロさんや玄太郎も心配しはじめる。
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