アクセサリー
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彩乃は飢魔愚0の二回目のライブをやっているとき、隆一と外のベンチで過ごした。
「スカートとかすごい似合ってるよ」
隆一はお世辞でもなんでもなく、そう言った。
彩乃は飢魔愚0のライブ終了後も残り、片付けを手伝ってくれた。
レンタルしたアンプやミキサーを一つの場所にまとめ、窓に張りつけた暗幕を取り外し、移動した机を元に戻して、簡単に掃除をする。
「別にやんなくてもいいよ」
玄太郎が重いアンプを運びながら言った。しゃがみこんで彩乃はばらばらのケーブル類を片づけている。
「あれ? これは……えっと」
隆一は慣れない作業にとまどう彩乃のもとにかけよる。
「この赤いケーブルは借りたやつで、こっちは俺らのだからここにしまってくれれば……」
「ああ、そうなんだ」
そう言ってケーブルをまとめる彩乃を見て、特別な感情を抱きはじめた。フェミニンな服装だといつも数十倍かわいく見える。スカートでしゃがみこんでひざをくっつけくる姿が特にかわいらしい。少し目を外したときに、重そうな機材を運んでいる彩乃を見て、あわてて手伝った。
小さい体で精いっぱいがんばる彩乃はとてもいたいけな女性に見えて、いとしく思えた。
自分がなんと単純なことで淡い恋心を抱くのだろう、と思うが、そう思ってしまったのだから仕方がない。彩乃に対する見る目が変わったのは事実だ。
「彩乃ちゃん、完全に隆一のこと好きだね」
片付けの風景を見て、玄太郎が隆一の耳元でささやく。
「そうかもね」
隆一は少し口元がゆるんだ。
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「ああ……いやだ……」
徳さんはすっかり酔いつぶれて寝てしまった。
隆一たちは徳さんをユウキさんの車に乗せた。
「俺、こいつ送ってくよ」
徳さんをトモヒロさんに任せることにした。
「それじゃあ、お疲れ」
ユウキさんの車を見送ったあと、玄太郎と別れてアパートへ帰った。