アクセサリー
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隆一に連れられて、テラスにやってきた。最近建てられた二号館には屋外にベンチとテーブルがあるのだ。
「涼しいね」
隆一はそう呟いて、ベンチに腰をおろした。
さわやかな風がふく、青空の下。彩乃と隆一以外にも、学園祭に遊びに来ている子供たちや、学生が五、六人いる。彩乃は隆一の隣に座った。
「今日はありがとうね」
隆一は足をくんで、自販機で買ったボルヴィックのキャップを開けた。
「ううん、私こそ誘ってもらってありがとう。楽しかったよ」
隆一の口に運ばれるボルヴィックを見つめた。彩乃は心地よく心臓が高鳴っている。それは、不安に押しつぶされるような鼓動でもなく、期待に胸が躍るような鼓動でもない。何かひとつの山を越えた、その達成感に浸るような、快くて適度な鼓動が胸に刻まれていた。
ちょうどいい緊張感。スポーツの試合に出たことはないけれど、この緊張感は試合前という感じだ。
これぞ、恋のときめき。彩乃はそう自己分析した。
「最初、見たとき彩乃だって分かんなかったよ。すごいかわいくて」
彩乃は気持ちが一気に高揚した。この言葉、この言葉を聴きたくて、彩乃は努力したのだ。
「ニットとかすごいかわいいじゃん。白と黒とグレイの組み合わせって、なんかすごい好きなんだよね」
隆一に誉められてうれしい彩乃は顔を赤らめた。体が熱い。今、この流れていく時間が止まってほしいと思う。
「本当に? うれしいな」