アクセサリー
「……何?」
 タカミの声がより冷たくなった気がして、怖くなった。怖くなったが、タカミの声が耳に吸いつくように離れない。
「あなたは自分のことしか考えていない」
「……え?」
「あなたは女性をモノだと思っている。最初、私にやさしくしてくれた。話しかけてくれたり、服装を褒めてくれたり、電話をくれたり……。最初は私もうれしかった。でも、それは私のためじゃない。全部自分のため」
 タカミはそこで一息つけた。
「あなたはいつも見返りを求めている。それはたぶん私だけじゃないんでしょ?」
「それは……」
「あなたのやっていることは、〝相手が愛されていると思うような行為〟なの。あなたに愛なんかない。愛することを知らない。私だけじゃない、いろんなことに対する行為もすべて自分のため。自分が格好よく映るため。バンドだってそうでしょ? そんなに熱意があるわけじゃない。ただ格好いいからやっている。そりゃ、趣味が読書やゲームよりバンドの方が格好いいものね」
 隆一は黙って聞いていた。何も言い返せないまま、タカミの話を聞く。
「あなたは私のためにやってくれているんじゃない。その行為が巡り巡って自分のもとに帰ってくることを望んでいる」
「……そうかもしれない」
「今、あなたが何をしているか知らないけれど、気をつけなさいね。あなたは格好がいいし、やさしい素振りを見せるし、モテるかもしれない。でもそこから先がいけない。あなたは表面上きれいなことが一番だもんね。付き合う女性も趣味も全部ファッション感覚なのね。あなたにとってはこの世に存在するものすべてアクセサリーだと思っているの」
「……アクセサリー」
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