アクセサリー
「今付き合っている人がいるかもしれないけど、あなたといたって楽しくないわ。全部自分のことしか考えていないから……、言いたいことはそれだけ……。何か反論ある?」
「……いや」
「それじゃあね。さよなら……」
 電話が切れた。
 隆一の手から携帯は床に落ちた。携帯を閉じる力も、持っている力もなかった。握力どころか、全身に力が入らない。
しばらく何も考えられなくなった。胸のなかに目一杯の砂利がつまったように苦しく、重くなった。
立っていられない。がくっと膝が折れた。カーペットにばたんと倒れる。地球の重力に完全に負けてしまったみたいだ。動く気になれない。
タカミに言われたことに反論できることはない。バンドだってそうだ。ただ格好いいからやっていたのだ。だからそこまで熱意はなかった。
 なんとなくは分かっていたことだった。分かってはいたが、タカミにはっきりと突きつけられた。何重にも覆って大事に守ってきた心臓がナイフでえぐられたように痛い。えぐられて、ぽっかりとなくなってしまった心臓の空間。
 はあ……。息遣いも荒くなり、何もできない。頭にもいっぱいの砂利がつまってしまったようで、何も考えられない。考えたくない。
 床に落ちた携帯が光り、メール着信音がする。
倒れたままの隆一は聞こえなかった。
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