アクセサリー
 一曲目、『Driver’s High』。
 玄太郎が手帳を開いて書き留める。隆一も異論はなく、先輩である徳さんとトモヒロさんの意見に賛成する。
 午後九時半、吉祥寺にあるスタジオペンタでのバンド練習を終えた。終えたあとはココスでミーティング。今日は一週間後に控えた文化祭のために曲順を決めるのだ。
「次もラルクで行くか?」
「悪くないね。じゃあ二曲目は……、『Shout at the Devil』にしようか」
「いやあ、それは後半じゃないですか? 徳さん?」
 玄太郎が横から口をはさむ。
 あえて前半はラルクで後半グレイにしちゃったらどうです? いやいや喉の負担も考えるとそうはいかないんだよ……。
 トモヒロさんは目にかかった前髪を手で横に流す。少し角ばった顔つきで怖そうな印象を与えるがワイルドで格好がいい。どれくらい格好がいいかというと、去年、あるドラマで高校生役をアマチュアから一人俳優を募集していた。二千人近い応募があったらしいが、トモヒロさんは最終選考まで残ったらしい。それぐらい格好がいいのだ。逆に徳さんはおっとりした性格で、太ってはいないがまるっこい感じがする。気立てがいいので、徳さんはみんなに好かれている。
 そんなバンドメンバーでミーティングをして、なんとなく曲順は決まった。
 演奏する楽曲は、『L'Arc-en-Ciel』と『GLAY』のコピーのみ。隆一たち四人の共通の好きなバンドがこの二組。
ロックファンから見れば、ただのJポップとみなされてしまうこともあるが、隆一たちは気にしなかった。好きなバンドの好きな曲を好きに真似して演奏するのがただ楽しかった。

「今年は何人ぐらい呼ぶ?」
 徳さんはそう言うと、オムライスの残り一口をスプーンですくいとって食べる。ケチャップで汚れた口元をナプキンでぬぐう。
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