アクセサリー
「久しぶりです」
 彩乃は笑顔を作って言った。
 作った笑顔だというのは見れば分かった。彩乃と目を合わせるのがつらかった。
「聞いてみなよ」
 玄太郎が隆一に促す。
「……彩乃は何で浮かない顔してたの?」
 隆一は彩乃にゆっくりと視線を向ける。
「えっと……、隆一君が心配で……。学校来てないし、メールしても電話しても返事がないから、何か病気でもしたのかな? って、すごい心配になって……」
 彩乃は口ごもりながらそう言った。一生懸命に気持ちを伝える姿がいたいけに思えた。
「……病気は別に何も……」
 隆一も口ごもる。
「じゃあ、なんで浮かない顔してるんだい?」
 玄太郎が逆に隆一にたずねた。
「……俺はあの……」
 隆一はそこから先が言えなかった。
 タカミに自分のことしか考えていない、と言われたこと。〝愛〟とは何か分からなくなったこと。そんなことをここで告白するのは違うような気がするし、それをここで告白することは抵抗がある。言いたくない。胸にしまって、自己解決したいのだ。
 何も言わない隆一を見かねて玄太郎は口を開く。
「言えないなら、俺の大事なお知らせから先に言うね。実は……」
玄太郎はそう言って一呼吸おいた。

「結婚したんだ」

「えっ?」
 隆一と彩乃は同時に声を出した。
「何? どうして? 誰? ピカ子?」
 隆一は驚いてしまって矢継ぎ早に質問をした。
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