アクセサリー
「今年で俺とトモヒロはいなくなるから……、あっ、玄太郎も辞めるんだっけ」
 そうなんすよ、というように玄太郎は頭を下げる。
徳さんとトモヒロさんは大学四年、玄太郎は短大二年。大学二年の隆一だけが残ってしまう。
「隆一はどうするんだよ?」
 トモヒロさんが隆一に目を向ける。
 隆一は空になったコーヒーカップの縁を指でなぞった。このバンドは非常に居心地が良い。無理を言えば、このバンドが延々に続いてほしい。
「……どうしようかね?」
 ついこの前にバンドを結成したように感じる。そのときは終わりを迎えることなど、ついぞ考えていなかった。終わりが近付くと、永遠を信じたい甘えた願望が胸にくすぶる。逆にもう終わりなのだ、と言い聞かせる自分がいて、せつない気持ちになる。
「トモヒロさんは、社会人になったらバンドはやるの?」
 トモヒロさんと徳さんも二十二歳で隆一と同い年だ。一応、〝さん″付けはするが、敬語は使わない。
「俺? その時の状況によるよな? 仕事に慣れるまではやらないんじゃないか?」
 イケメンのトモヒロさんは何を言ってもさまになる。
「じゃあ、俺もその時の状況による」
 隆一はこの先どうするか分からない。バンドに青春を捧げたいという強い思いはない。辞めてしまうのは少々寂しいが、辞めてしばらくすると何でもなくなってしまうのかもしれない。
「ゴリメタルのとこに混ぜてもらえば?」
 携帯を眺めながら徳さんが言った。電波を探して、携帯をいろんな方向にかざしている。
「イヤだよ」
 隆一は否定した。ゴリメタルのバンドに参加するぐらいなら、やめてしまったほうがいい。
「本番、ゴリメタルは何やるんだろうな?」
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