アクセサリー
 サザンテラスよりもきらびやかに輝くタイムズスクエアが見えてくる。二人はゲートをくぐった。
 その幻想的な世界に彩乃は吸いこまれそうだった。雪だるまやサンタクロースのイルミネーションや、ミラーボックスが映しだす色彩。自分の過去もこれからも、どうでもよくなる。インターネットの無料相性診断で一喜一憂した過去や、メールの返信がなくて落ち込んだ過去、せっかくのデートにヤボったい服装してしまった過去。そんな過去はもうどうでもいい。例え、姓名の相性悪かろうと運命と未来は自分の手で良い方向へ切り開いていくのだ。過去などどうでもいい。見つめるは未来で前を向いて歩いていく。そんな希望にあふれていた。
「すてきなイブにしよう」
 隆一は言った。
「……うん」
 彩乃は隆一の腕に腕を絡ませて、寄りかかった。隆一もそれを受け止めた。
「イブにはもっときれいなところへ行こう。ここじゃなくてさ……、どこがいいかな?」
隆一は少し考えて、
「……東京タワーとか、六本木とか。……東京ドームもきれいかな? どこがいい?」
 と笑いながら言った。
「お台場とかいいかも!」
 彩乃は満面の笑顔で言う。
「そう。彩乃の好きなところにしよう」
 彩乃は笑った。隆一もそれを見て笑顔になる。楽しそうな隆一の顔を見れてうれしかった。彩乃に心を開いてくれる。そんな笑顔がとてもうれしい。

「できちゃった婚はよくないよね?」
「えっ?」
 急な質問にとまどう。それに隆一は玄太郎の結婚を祝福していたように見えたのだった。
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