アクセサリー
 二人は天井のミラーボールでオレンジやブルーに照らされている。
「玄太郎のことなんだけどさ。結婚して、なんか大人びて見えちゃったけどさ。できちゃった婚はやっぱよくないよ」
 隆一はまっすぐに前を見つめて言った。
「そうかなあ?」
 彩乃はせっかくのおめでたいことを否定するのは気がひける。心から祝福してあげたい気持ちなのだ。
 暗い夜空の下に、光輝くイルミネーションの中。彩乃はできちゃった婚について考える。あんまりよくないと思うけど、例えばできちゃった婚をしたタレントがテレビで記者会見に答える様子を見ると、とても幸せそうでうらやましい。決して悪くないことだと思ってしまう。
「愛があればいいんじゃない?」
 自分なりの結論を隆一に告げる。
「愛ね……」
 隆一は立ち止まる。何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。彩乃は不安になる。
「愛ね。うん、きっと玄太郎なら責任持って育てると思うよ……、でもさ結婚っていうのはしっかり覚悟を決めてやるもんだよ」
「……うん。そうだよね」
 彩乃はうなずいた。それは間違いない。

「だから、俺はさ、……マジで覚悟を決めてやるよ」

 それを言い終わると、隆一は突然キスをした。彩乃はびっくりして目を大きくした。やわらかな唇の感触が伝わる。隆一は唇をはなす。
そっと彩乃は隆一の胸に顔をうずめた。隆一は優しく抱きしめた。


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