身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「指がイナブの汁で汚れてしまった。きれいにしてもらおうか」


リーンは返事を諦め、濡れた布を手にしたとき、


「そうではない。王に同じことを言われたら、あなたのその可愛らしい口で舐めてきれいにするのだ」


甘い蜜の滴る指先でカリムはリーンの唇に触れた。


(……恥ずかしいけど、でも彼にはもっと恥ずかしい姿を見られてるし……)


王命というより、彼女にとってはカリムの命令であることが重要となりつつあった。

この金色の包まれた美しき男性に、リーンの心は恐ろしいほど惹きつけられる。


リーンは指を伝って流れ落ちるイナブの果汁を、舌先ですくい取った。カリムの指はとても甘く、イナブと同じ味がして――。

ふと見上げたカリムの瞳は、まぶしいほどの光を帯び、艶めいていた。


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