身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「そうでなければ“砂漠の覇者”とは呼ばれまい。砂漠で最も強いのは水脈を押さえた者だ」

「あ、あの……それは、カリムどの以上に?」

「なぜ、そのようなことを聞く?」

「わたくしは、カリムどのが最強の神官だと思っておりました」


そう呟いたリーンの前髪から、雫が滴り落ちた。

白い衣装は肌にピッタリと張りつき、水中に美しい曲線を描いている。そっと腰に触れると、彼女の肢体がピクンと反応した。その目に明らかな欲情の色が浮かぶ。

刹那――カリムはリーンを奪いたい衝動に駆られた。

場所などどこでも構わない。泉の中でも、砂の上でも……。


(この娘を我がものにして、誰に責められるというのか? 王はこの私だ!)


カリムがそう思ったとき、中空に白い影が舞った。シャーヒーンだ。彼女はひと鳴きして、すぐに見えなくなる。

それは危険を知らせる声ではない。

シャーヒーンはカリムの心を敏感に捉え、警告を発したのだ。


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