身代わり王女に花嫁教育、始めます!
(美しく、有能なしもべだな……クソッ!)


側近の名を借り、リーンに近づいたのはカリムのほうだ。


正しい名を名乗らず、彼女を我がものにはできない。

リーンがカリムという名前の男に忠誠を誓えば、彼女は本物のカリムのものにされてしまう。王の権力で取り上げることは可能だが、彼女のハーレムでの地位はかなり低くなる。

それに、リーンの名前も問題だ。

彼女の正しい名前を知らないカリムは、『妻にする』と宣言することもできない。


カリムはリーンを放し、水中に身を沈めた。


「カ、カリムどの?」


リーンは驚きの声をあげたが……その彼女を背後から抱き寄せ、水中に引っ張り込んだ。

泳げないという彼女を抱きしめ、水中を飛ぶように泳ぐ。

その動きはまるで魚のようだ。


そしてカリムはリーンを抱きしめたまま水面に浮かび上がった。

濡れた身体に月光を浴びて、リーンの肌は一層艶めいた。それを目にしたカリムは、いよいよ彼女を抱く腕に力を込める。


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