身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(6)ふしだらな淫婦

リーンはすべてをカリムに打ち明けようとしていた。

国境近くのテントに半ば幽閉され、国から同行した侍女とも引き離され、彼女が会話をして気持ちを伝えることができるのはカリムただひとり。

そのカリムからは、『花嫁教育』との名目で信じられないほど恥ずかしいことをされてきた。

雄々しく、美しく……多少、嗜虐的な傾向があるにせよ、リーンは心と身体にカリムの存在をすり込まれた。


(カリムさまにすべてを話すしかないわ。もし助けていただけるなら……彼にわたし自身を捧げて生涯の忠誠を誓おう。でも、王の前に偽者として引っ張り出されたときは……)


レイラー王女の罪を詫びて、少しでもクアルン国王の機嫌を取るよりない。

大公のため、何より、バスィールに暮らす民のために。


リーンの祖国、あの小さな国を戦火に巻き込むことだけは避けたかった。

一度戦争になれば、おそらく、まともな戦にもならないだろう。クアルンと東の大国に踏み潰されて、あらゆる富や資源を搾取されてしまうのだ。

小さくて険しい地形でありながらも、砂漠と緑が融和した美しい国。

だが大国に挟まれ、大国の思惑で独立を認められた国でもある。

バスィールはその宿命から逃れることはできない。母国を守るために命を捧げるのは、無駄なことではないと信じている。


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