身代わり王女に花嫁教育、始めます!
(なんだか……故郷に帰ってきた気分だわ)


彼女は今の状況も忘れ、ついつい夢中になって窓から見える砂漠を見つめていた。

そのとき、砂丘の向こうに素晴らしく大きなテントが見え隠れし、リーンの胸は高鳴る。


(なんて美しいテントなの。ひょっとしてベドウィン? もし母の部族だったら……)


「レイラー王女、国王陛下がお待ちのテントが見えました」


それは馬車の脇を併走する馬に乗った兵士の言葉だ。一瞬で高鳴りは動悸へと姿を変える。

リーンはゴクリと息を飲み込んだ。


「……いよいよですわね、リーン……いえ、レイラー王女様、多くの命がかかっております。しっかりと頑張ってくださいませ」


(絶対に無理よ! ばれたら……わたし、どうなるの?)


リーンは砂漠に逃げ出したい気分だった。


< 13 / 246 >

この作品をシェア

pagetop