身代わり王女に花嫁教育、始めます!
恐ろしい剣幕で怒鳴られ、リーンは息を飲んだ。


「さあ、テントで着替えを済ませたら、そのまま横になるがいい」

「カ、カリムさまは……どうなさるのです?」


テントはひとつしかなかった。

それも、王の用意した広く美しいテントとは違い、実用一辺倒のものだ。カリムでは真っ直ぐ立つことも困難だろう。


「私は外で護衛に立つ」

「そんな、それでは申し訳ありません……あの」

「では、私を中に招き入れ、あなたはどうするおつもりか?」

「それは……」

「同衾すれば間違いなく、私はあなたの純潔を奪うだろう。それでもよいと言われるのか?」


カリムは余裕に満ちた表情をかなぐり捨て、殺気だった視線でリーンを射抜く。


「いや、あなたはよいのかもしれぬな。だが、私は王の怒りを買い、側近の任を解かれるだけでは済まないだろう。あなたは私に死ねというのか?」


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