身代わり王女に花嫁教育、始めます!
リーンはその言葉に心が震えた。

カリムを追い込むつもりなど欠片もない。ならば、せめてくちづけであれば、王に知られずとも彼に捧げられるのではないだろうか?

その思いを伝える前に、


「確かに、私はやり過ぎたようだ。王のお気に召すよう、花嫁にふさわしい純潔と、娼婦のように淫らな身体を作り上げようとしたつもりが……。まさか心まで、清らかなる王女から、ふしだらな淫婦に変わるとは――計算外であったな」


胸を占める温かな思いが一瞬で吹き飛んだ。


『ふしだらな淫婦』


カリムはリーンをそんな目でしか見ていなかったのだ。


「わたし……わたくしは、テントに戻ります」

「ああ、そうしてくれ。そして、朝まで出て来ないでくれ。レイラー王女、あなたは私の欲望にだけ火をつける、いやらしい妖婦だ。私の好みではないが……王は喜ばれるだろう。その誘惑の手管は、王に向かって発揮してくれ」


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