身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(1)大公の使者

オアシスで過ごした一夜から、四日目の朝、リーンのもとにバスィール大公の使者が訪れる。


オアシスでカリムに口づけをねだり、『娼婦のようだ』『いやらしい妖婦』そんな侮辱的な言葉で退けられた。

あれ以来、カリムはリーンのもとを訪れていない。

リーンは与えられた侍女シャーヒーンと共に、この大きなテントの中を歩いてみたが、カリムの気配すら捉えることはできなかった。

シャーヒーンに尋ねても、悲しげな笑みを浮かべて首を左右に振るだけで……。

それはまるで、リーンの心の内だけでなく、オアシスでのカリムの所業を知っているかのような表情だった。


(カリムさまのことなんて忘れるのよ! 第一、レイラー王女がみつからなければ、わたしは明日にも処刑されるかもしれないんだから……)


そう思う反面――。


(だからこそ、たった一度だけでいい。初めて好きになった人に抱きしめて欲しかっただけなのに。わたしが王の好みであるなら……奴隷としてハーレムに入れられてしまう前に)


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