身代わり王女に花嫁教育、始めます!
それでいて、そのことが王に知れてカリムが罰せられるというなら諦めなければ、とも思う。

リーンの心は砂嵐に巻き込まれた木の葉のように、千々に乱れていた。



「大公陛下のお言葉を伝えさせていただきます」


そこは最初にホマーと一緒に通された部屋だった。

このテントの中でシャーヒーン以外の女性に会ったことがない。その部屋にも多くの兵士が並んでいたが、立ち会う女性はやはりシャーヒーンだけだった。


ひれ伏す使者の前に異国風の椅子が用意され、リーンは腰かけるように勧められる。

肘掛けのあるゆったりとした椅子に彼女はチョコンと座った。だが、シャーヒーンからもっと奥に、と目配せされ……仕方なく背もたれに身体を預けた。

王が用意してくれた華やかな衣装に身を包むものの、外側はクアルンの慣例に従い黒い衣を着用している。

外から見えるのは目だけで、肌の色はおろか体型すらわからないだろう。


(見たことのない男性だけど、使者はわたしのことを聞いているわよね? だから、ここまで来たんだろうし……)


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