身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(2)誓いのくちづけ

「青ざめておられましたよ。陛下もお気の毒なことをなさる」


そう言って国王を責めたのはカリム・アリーだ。


彼に偽名を名乗らせる訳にはいかず、カリムだけでは混乱すると思い、セカンドネームとなる父親の名前まで名乗らせた。

だが、苗字を持たず、父親の名前を連ねるこの国ではさほど珍しいことではない。

父親の名前が重なれば祖父の名前を、それでもダメなら曽祖父の名前を、というお国柄だ。

そのため、父親の同じ兄弟は同じ名前をつけることはありえない。アリーとは先代国王の名前であった。


王は見張り台の最上階に立ち、引き上げるバスィールの使者に視線を向ける。


「私を責めるのか? 決めたのは大公ではないか」


それはリーンのそばにいるときとは違う、王の顔だった。


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