身代わり王女に花嫁教育、始めます!
薄布を重ねて遮られたカーテンを押し開け、カリムはテントに足を踏み入れた。

色鮮やかな絨毯の上に、白い衣装を身にまとったリーンが力なく座り込んでいる。長く豊かな黒髪が砂丘のようにまろやかな曲線を描きつつ彼女の背を覆う。


かすかな衣擦れの音にリーンは顔を上げ……濡れた瞳で彼を見上げた。


(これは、これは……まさか、これほどとは)


その姿は、ここ数日で見事に花開いたようだ。

まだまだ頼りなく、儚げな美貌。だが千日に一度降る砂漠の雨のように、清らかで貴重な輝きを放っている。


カリムはすでにリーンを花嫁にすることに決めていた。

身分や地位などなんとでもできる。本物のレイラー王女の身柄を押さえたのもそのためだ。バスィールの大公は国の安泰と娘のためなら、どんな要求でも受け入れるだろう。

だが、そのカリムの計画は労せず手に入れられることとなった。


あとは、すべての手配を側近アリーに任せ、自らは砂漠の宮殿に戻り、リーンの到着を待てばよい。

結婚の儀式を終えた夜、たっぷりあの肢体を堪能すればよい。九割がた手中に収めたことを思えば、慌てる必要などないはずだ。


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