身代わり王女に花嫁教育、始めます!
いよいよカリムが振り返ると、リーンは瞬きもせずに見つめていた。それはあまりに悲しくて切ない女のまなざし

カリムはほんの少し後ろめたい気持ちになる。


「……私はあなたのためを」

「わかっております。カリムさま……砂漠の舟に乗せていただき、ありがとうございました。オアシスに連れて行っていただいたことは生涯忘れません」


そう言うとリーンはカリムに背を向けて立ち上がった。


「では……道中の無事を祈っている」


カリムはそれだけ言うと、そそくさとリーンの部屋を出た。リーンから様々な告白を聞いてしまえば、面倒なことになる。そう思ったからだが……。

テントをあとにし、ほんの数歩足を進めただけでピタリと止まった。


カリムの中で何かが警告を発する。


彼は本能に従い踵を返した。再び、同じカーテンを引き裂くようにかき分け、中に踏み込む。

そこには、食事用のナイフで自らの喉を突こうとするリーンの姿があった。


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