身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「馬鹿者! なんという愚かな真似を!」


カリムは自分の立場や芝居も忘れ、リーンに飛びついた。彼女はカリムの腕の中で力を失い、そのまま泣き崩れる。 


「どうして……どうして、こんなことになったのか……。わたしにはもう、何をどうしたらいいのかわからなくて。このまま王のものに、なんて……わたしは、わたしはレイラー王女では」


リーンの言葉を奪うように、カリムは唇を重ねた。

それは柔らかく温かな唇だった。彼の知る誰より甘く、どこまでも貪り尽くしたくなるような唇。

カリムはリーンが息つく暇もないほど、唇を奪い続けた。


「あの……カ……さ、ま……」

「サクルと呼べ。私のことを二度とカリムの名で呼ぶな。いいな」

「サ……クルさま?」


重なった唇の間からふたりの声が漏れる。

カリム――いや、王は自ら実名であるサクルを名乗り、リーンの動きを封じた。


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