身代わり王女に花嫁教育、始めます!
『あの……アリーどの。お尋ねしたいことがあります』

『なんでしょうか? 王女様』


アリーはなぜか、リーンを見下しているようだ。

他の者たちは敬意を込めて『王女様』と呼ぶが、この男性だけは仕方なさそうに言う。


『陛下の側近に、あなた以外にカリムという名前の方はおられますか? あるいは、サクルという名前の側近でも……』

『そのような者はおりません! よろしいかな。あなたは間もなく正妃となられる身だ。軽々しく男の名を口にしてはなりませぬ!』

『は、はい』


アリーに憤怒の形相で言われ、リーンは黙った。


(サクルどの……あなたを信じていいのよね? わたしに命を絶つような真似をさせないために、妻にする、なんて言ったんじゃないわよね?)


馬車に揺られながら、しだいに体に込もる熱を感じつつ、リーンは砂漠の精霊に祈り続けた。


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