身代わり王女に花嫁教育、始めます!
大公はリーンのみならず、レイラー王女もサクルに娶らせたいようだが……。


(確かに美しい娘ではあるが……四年前に思ったとおり、あの娘は毒を持ったサソリそのものだ。――反吐が出る)


レイラー王女はサクル本人と面会するなり、


『真実を告白いたします。わたくしは純潔を失ってなどおりません。王の評判が恐ろしくて逃げ出してしまいました。ですが、王女の役目を果たしたいと思います。どうぞ、お慈悲を』


十六歳の小娘とは思えぬ声音で、サクルに縋り付いてきた。


砂漠の国にこれほどまでの贅を尽くした宮殿があるとは思わなかったのだろう。

そして“狂王”が黄金の髪と瞳を持つ、若く美しい男であることも。


(大公との約束だ、殺す訳にはいかん。その代わり、二度とクアルンの砂は踏めぬようにしてやる!)


そのときだ。

天空に舞うシャーヒーンが急を告げる声で鳴いた。


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